#4 採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ

KoheiKAJIWARA
22 min readAug 13, 2020

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いつものように本の内容を簡単にまとめます。まとめる目的は、人材業界がどのように発展し現在に至るのかを俯瞰して捉え、今後どのように変化する可能性があるのかを考えてみることです。

今回まとめる本はこちら。

求人広告ビジネスと人材紹介ビジネスが担ってきた中途採用マーケットをベースに、採用支援サービスの過去から現在までの流れを通じて、この先の未来を読み解いていきます。 それがどのような未来かを考えるひとつの〝モノサシ〟として、本書では人材採用に関わるサービス全体が、「人材を採用する側の企業主体のサービスの在り方」から、「求職者主体のサービスへの変化」が今後さらに求められ、その結果としてこの業界が適正な進化を遂げていくのではないか、という仮説を提案させていただきたいと考えています。

このように人材採用サービスが「求職者主体のサービスへの変化」することを求められ、その変化を軸に進化していくのではないか、という仮説の提案が本書の狙いだと考えられます。

なので、「どうして求職者主体になるのか?」といった部分が読んでいくべきポイントになります。

目次

  • 採用ビジネスを取り巻く全体像
  • 求人広告と人材紹介
  • ビジネスモデル変遷
  • リクルーティングビジネスの新潮流
  • 未来シナリオ
  • まとめ

採用ビジネスを取り巻く全体像

産業革命以降、機械や電気を中心としたモノづくりが主役だった〝工業化社会〟の時代には、専門知識や技術・スキルの習熟が求められ、企業が人材を長期雇用することが生産性向上と密接に紐づいていました。

1995年前後を境に、インターネットや携帯電話の普及が加速し、〝情報化社会〟、そして〝ネットワーク化社会〟へと移行していく中、産業構造の変化にキャッチアップできない企業が増え、従来存在していなかった新興ベンチャー企業が主役になりながら、雇用市場で求められる経験やスキルも、過去にはなかった速度で変化していきました。

日本では、1986年(昭和61年)に労働者派遣法が作られ、その法改正と共に裾のを広げ、派遣という働き方も一般化してきました。また派遣以外にも、フリーランスの業務委託や顧問、フランチャイズ、代理店契約など、さらに採用以外の多様な労働力調達手段のプレゼンスは高まってきています。

労働力の調達についても下記のように多岐に渡っていることが見て取れます。

労働力調達の概観

求人広告と人材紹介

求人広告

1960年3月、江副浩正氏が東京大学の学生新聞である「東京大学新聞」の広告代理店「大学新聞広告社」(現・リクルートホールディングス)を創業、1962年4月に大学生の就職活動のための情報誌『企業への招待』が創刊されます。

https://www.amazon.co.jp/dp/B07835MRZ7/

江副氏とリクルートの成り立ちについてはこちらの本から詳細を読み解くことができます。

1967年、アルバイト求人を専門にしたメディアとして、学生援護会(現・パーソルキャリア)が首都圏で『アルバイトニュース速報』を創刊しました。

1975年には、リクルートが正社員の中途採用求人を集めた『週刊就職情報』を創刊、これが正社員の転職市場における広告メディアビジネスの起点となります。1976年から1984年まで『就職情報』編集長を務めた元リクルートの神山陽子氏がとても面白いことを述べています。

「「明るい転職」を実現するための事業を開始するにあたって、私は、この事業が求人企業の立場に立つか、求職者側の立場に立つか、の選択がとても重要だと考えていました。メディアを成功させるためのすべての基盤は信頼です。転職市場における求人企業と求職者では、圧倒的に弱い立場にある求職者側に寄り添う必要があります。だから議論を重ねて、『就職情報』は〝求人情報誌〟ではなく〝就職情報誌〟という位置づけになっているんです」(神山氏)

神山さん自身が、中途採用でリクルートに入社したこともあり、一度会社を辞めると「脱落者」のように見る社会の目を変えたいという気持ちが強かったようです。終身雇用で一つの会社に勤めるのが当たり前という当時の価値観のなかで、こういった強いコンセプトを打ち出せるリクルートのすごさも感じ取れます。

人材紹介

日本における人材紹介業は、江戸時代から源流が始まっていると言われています。大都市の東京や大阪には、「口入れ屋」と呼ばれる人材斡旋業者があり、仕事と人材の仲介が幅広く行われていました。

明治時代になると工場化が進むにつれ労働力がさらに数多く必要となり強制労働や差別などの問題が発生したことから国から法令が制定され、有料職業紹介について基本的な規則が定められるようになりました。

そして昭和に入り、第二次世界大戦が終わった1947年(昭和22年)に、GHQの指導により職業安定法が制定され、人材紹介業に厳しい規制が課される時代になりました。職業安定法によって、「職業選択の自由」「採用募集における差別禁止」「守秘義務」など、近代的な職業紹介事業としての原則初めて確立されることになったわけです。

同年12月1日に公布された失業保険法、1949年(昭和24年)5月20日に施行された緊急失業対策法と併せた〝職安三法〟が、戦後の職業安定行政の支柱となっていくことになります。

その後、昭和30年代の10年間で、日本の雇用労働者は約1000万人増加します。前述の、神武景気、なべ底景気、岩戸景気などを経て、昭和30年の後半から40年代にかけて日本経済は加速度を上げて高度成長期に移行していくことになります。大失業時代から、労働力不足の時代への転換が起こります。

終身雇用が一般的で、人材の流動が少ない時代にはまったく伸びなかった日本における人材紹介ビジネスは、ようやく一部の領域で1970~1980年頃になって少しずつ成り立つようになっていきます。

1995年のインターネット登場や1997年の金融ビッグバンなど時代の変遷を経て、1999年には職業安定法の改正で制限されていた取り扱い業種の事実上自由化によって、一気に一大産業として花を開かせていくことになりました。

このように時代の変化を俯瞰して捉えてみると1967年に学生援護会(現・パーソルキャリア)が『アルバイトニュース速報』を創刊したのは時代を捉えたタイミングだったとみて取れます。

ビジネスモデル変遷

基本構造

リクルーティングビジネスの構造は、基本的にはリボン図モデルとなります。リボン図モデルとは、端的に言うと求職者、企業両方に対して、それぞれニーズを喚起し、プラットフォームに集め、その双方をマッチングするモデルです。価値向上のために新しいサービスの軸を持ち込んで、業界を変えてきたというのが、ビジネスモデル変遷の歴史となります。

①1970年以前のビジネスモデル

  • 求人広告の黎明期
  • 有料で新聞やチラシに求人広告を掲載
  • 不特定多数の人にリーチすることができるように
  • 有料で対面サービスを始めたのが人材紹介
  • 最初の人材紹介会社はケンブリッジリサーチ研究所

②1970年代のビジネスモデル

  • 求人情報のみを集約した求人情報誌が登場
  • 転職しようと考えている人にしっかりとリーチ
  • 集約された情報を見ることが出来るという点で求職者価値も向上
  • HHは転職市場にいない優秀な人材を採用したいというニーズに応えた形

③1980年代のビジネスモデル

  • 業界特化や女性向けなどのセグメント特化型求人情報誌が登場
  • 精度の高いマッチングが可能となる
  • 人材紹介における前課金制が壁にぶつかる
  • 人材紹介においてニーズが拡大していくにつれて負の遺産を抱える

④1990年代のビジネスモデル

  • 求人情報誌がWeb化
  • 紙媒体の求人情報誌は徐々に役割を終える
  • 掲載できる案件も大幅に拡充
  • リクルートがこれまでの課題だった前課金制を改め、1993年に成功報酬型に変更
  • スカウトメールを送れるデータベーススカウトモデルが始まる
  • 能動的にアプローチする攻めの採用が出来るように

⑤2000年代のビジネスモデル

  • セグメント特化型求人情報サイトが次々に生まれる
  • 成功報酬型求人広告の登場
  • ビズリーチは、エグゼクティブに特化したDBを1から作り存在感を表す
  • 求人広告サイトが、企業やエージェントにDBを開放しはじめる
  • 改正職業安定法の施行により、民間の有料職業紹介事業が原則自由化され一気に市場は拡大
  • 職種特化型、業界特化型、女性特化型など様々なセグメント特化型人材紹介が登場

⑥2010年代のビジネスモデル

  • ソーシャルリクルーティングサービスが出始める
  • ソーシャルのつながりを利用して、転職潜在層にアプローチ
  • テクノロジーベースのモデルであり、営業リソースなどは多く要していない
  • アグリゲーション型求人検索エンジンの登場

リクルーティングモデルの歴史的変遷

大きな傾向として、求人広告においては、求職者提供価値を向上させ、求職者がより多く集まるプラットフォームにしていくことを追求した歴史であり、人材紹介は企業価値向上に力点を置き、企業の課題や不満に対して、丁寧にクリアしてきた歴史と言えます。

また一連の流れを捉えると、「テクノロジー」「サービスの細分化」「法の施行」が変化のポイントになっているように感じ取れます。

リクルーティングビジネスの新潮流

空白地帯

リクルーティングビジネスにおけるビジネスモデルMAPを見てみると、低価格帯のビジネスモデルが存在しておらず、ビジネスモデルの空白地帯があるということがわかります。

理由として考えられるのは

  • 低価格戦略に出る企業が無かった
  • 安かろう、悪かろうというニーズがない
  • 価格ではなく、サービスクオリティ向上の戦いをしてきた
  • インターネットが発達しておらずアナログでコストが掛かっていた
  • 同じビジネスモデルでのコピーで新規参入が多かったのではないか

ソーシャルリクルーティング

ソーシャルリクルーティングのビジネスモデルとしては主に2つあり、一つはWantedlyを代表とするSNS拡散型求人PRサイトと呼べるビジネスモデルで、もう一つはLinkedInを代表とするビジネスSNSと呼ばれるモデルです。

事例研究:OpenWork

https://www.vorkers.com/

OpenWork(旧Vorkers)は2007年6月に設立された、社員や元社員による、クチコミのデータベースを運営する会社です。OpenWorkでは、この社員クチコミサイトの運営がメインですが、リクルーティングサービスも提供しています。

ビジネスモデル

OpenWorkリクルーティングのビジネスモデルは、社員クチコミサイトに会員登録し、WEB履歴書を登録しているユーザーに対して、クチコミの会社ページ上に求人を掲載して応募を集めることや、スカウトを送ることができるサービスとなっています。

掲載アルゴリズムのポイント

  • 広告費での表示順ではなく、全てスコア順
  • スカウト可能な送信件数も、評価スコア毎で傾斜を付けている
  • スコアが高い会社ほど多くスカウトが打てる

今までは広告予算が優位だったジョブマーケットを、働きがいのある企業がより優位になる、まさに個人目線のルールに変えていこうというのが、ゲームチェンジャーとしてのチャレンジとなります。

従来のリクルーティングビジネスとの違い

  • 企業主体のコンテンツ発信ではない
  • いいことも、悪いことも書いてある
  • よりリアルに近い理解ができる

このように求職者主体のサービスが転職活動のプラットフォームになっていく可能性が高いと思われます。一方で、リクルーティングビジネスとしては、よりプラットフォーム価値を高め、求職者がさらに集まる場を作り、そこからどのように企業と接続し、マネタイズしていくかがポイントになると考えられます。

事例研究:indeed

https://jp.indeed.com/

indeedは2004年にアメリカ、テキサス州オースティンに設立された会社で、インターネット上にあるあらゆる求人情報をクローリングして集め、まとめることで、新しい仕事を探す求職者にとって、求人情報をワンストップで提供するというアグリゲーション型求人検索エンジンのビジネスを行っている会社です。

ビジネスモデル

特徴

  • 「世の中にある求人情報を集め、フィットした求人をワンストップで見ることが出来る」こと
  • 「世界トップレベルのSEO技術により、求人検索時にほぼindeedが上位表示される」こと
  • 「料金は案件ベースではなく、クリック課金」であり、求職者がスポンサー広告をクリックした時のみ発生するモデル

求職者が仕事を探そうと思った時に、最初にランディングするページが求人広告サイトや人材紹介サイトではなく、indeedになろうとしています。そうなると、求人広告、人材紹介共に直接の集客が難しくなり、indeedからの送客に頼らざるを得ない状態に陥る可能性があります。

未来シナリオ

2030年の働き方

まずは働き方がどのように変化するのかを考える必要があります。メイントピックは以下の2点です。

  • さらなる少子高齢化
  • テクノロジーの進化

就労人口が減っていくことになり方向性としては人材獲得難の時代に向かっていくことになります。またビジネスのスピードが増し、企業の平均寿命が今後増々短縮する可能性が高くなります。当然ながら一社でキャリアを全うすることが難しくなると考えられます。

野村総合研究所の試算によると、日本の就業者のうち49%が人工知能やロボットなどで代替可能としており、今ある仕事がなくなり、今はない仕事が新たに生まれてくると考えられます。テクノロジーの進化に対応していくことは間違いなく求められ、今の保有スキルだけでは、その先長い期間働いていくことは難しく、スキルが陳腐化しないよう、変化していくことが求められます。

これまで「企業が個人のキャリアを考える」という社会から、個人個人が自分のキャリアに主導権を持って、自身のキャリアデザインをしていくという生き方、働き方に高速で対応していく必要があります。

リクルーティングビジネスの方向性

企業がリクルーティングサービスを選ぶ際のニーズは、自社にとって「優秀な人材」を、「手間なく」「安く」、採用したいの3点。シンプルな仮説としては、企業にとって「優秀な人材」を「手間なく」、「安く」採用できるサービスが出てくれば、今後は既存の二大人材サービスである求人広告、人材紹介からシェアを奪うことができると考えられます。

求職者ニーズは、ステップとして、大きく3つに分かれ、①自己のキャリアの方向性に関する情報収集②具体的な企業・案件探し③転職活動支援の3ステップとなります。全体を俯瞰して情報の非対称性を埋めてくれたり、フラットな立場でアドバイスしてくれるサービスは求職者価値が高いと言えます。

これまでのリクルーティングビジネスは企業ニーズに対して直接的に答えようとする側面が強かったのですが、それでは多種多様な志向・価値観を持つ求職者ニーズに応えきることができません。

求職者の価値観・志向が多様化し、かつ求人数に対して構造的に求職者数が多い中途採用の市場構造の中では企業ニーズに応えるためにも、優秀な人材が集まるプラットフォームを構築する必要があります。

まとめると、今後のリクルーティングビジネスは「BtoCtoB」の求職者に対する転職支援ビジネスになっていき、求職者価値に応えてくことが、リクルーティングビジネスでプレゼンスを出すことになっていく可能性があります。

ターゲットレイヤーにおけるチャネル選択

一つ目のマネジメント層以上の採用においては、当面、状況は大きく変わらないと考えられます。理由はインターネット上に求人が公開されることが多くなく、会社としても重要なポジションとなるため、クリアする論点が多くあり、人が介在して進める必要がある要素が多いためです。

二つ目のプレイヤー領域は、今後、戦国時代を迎え、業界の再編バトルが始まります。このプレイヤー領域においては、まさに従来のビジネスモデルであるネット求人広告と人材紹介と、新潮流であるソーシャルリクルーティング、アグリゲーション型求人検索エンジン、そして無料チャネルのリファーラルリクルーティングが、同じ採用ターゲットに対するソリューションとしてパイを取り合うことになるからです。

企業提供価値起点でのビジネスモデル

「負荷」と「価格」の二軸でプレイヤー領域のビジネスモデルを整理したものが下記のようにまとめられています。

従来
将来

このように、二軸で切った時に、企業価値が高い領域は、当然のことながら、「負荷が少なく、採用単価が低い」領域になりますが、ここにプロットされるのがアグリゲーション型求人検索エンジン経由での自社ホームページ採用(オウンドメディアリクルーティング)となります。すなわち、今後このアグリゲーション型求人検索エンジンが企業にとってのファーストチョイス(第一領域)になっていくでしょう。

第二領域は「負荷は高いが、採用単価が安い」領域になります。ソーシャルリクルーティングと呼ばれるSNS拡散型求人PRサイトやビジネスSNS、そして無料チャネルであるリファーラルリクルーティングについては、潜在層ターゲットで採用に時間が掛かること、負荷が高いところがあります。しかしながら低価格であるため、自社HPと併用して利用する企業が多いと考えられます。

第三領域としては、「負荷が低いが、採用単価が高い」領域である人材紹介モデルです。手間がかからず、コストが安いに越したことがないので、まずは第一領域と第二領域で採用していくことになります。ですので、エージェントに対して依頼する案件は、売り手市場の採用難易度が高い案件に絞られていくことになります。

歴史上、常にリクルーティングビジネスの中心を走り続けてきた求人広告ですが、次の10年で、かなり厳しい環境にさらされる可能性があります。ファーストチョイスになっていくアグリゲーション型検索エンジンや、ソーシャルリクルーティング、リファーラルリクルーティングなど、より低価格や無料サービスが台頭してきていること、一方で、人材紹介が売り手市場向けサービスとして、より高付加価値の方向にビジネスモデルが磨かれていくと、そのど真ん中にある求人広告はプレゼンスが中途半端になり、居場所を失うことになります。

前課金の低価格サービスがもっと伸びていくということは、採用における後工程、つまり応募から選考、内定出し、クロージングといったプロセスについては、人事の負担が増えるところになります。このことから外部の人材サービスとしてRPOが伸びてくるのではないかと考えられます。

変化の方向性

ファーストチョイスがアグリゲーション型検索エンジンになり、企業と求職者がダイレクトにつながっていく時代となります。そこに第二領域として、ソーシャルリクルーティングやリファーラルリクルーティングといった、関係性が濃い手法が併用されていきます。そこで採用がカバーできないハイレイヤー領域、難易度、希少性の高い領域については、その期待に応えられる専門の人材紹介会社に依頼することになります。すなわち、その高い要望、期待に応えられない人材紹介会社は淘汰されていくと考えています。

今後、サービスの進化がさらに求職者起点となることが重視され、かつ結果的な価値に重点が置かれるようになると、「リボン図モデル」をもとにしたサービス設計から「入社・採用」の市場全体における総量をユニバースとおいて、その中における自社のリーチカバー率や決定カバー率を最重要指標とする「にんにく図」型のKPIに変化していく可能性が高いと考えられます。

にんにく図

マーケット全体としては、この20年伸び続けてきたリクルーティングビジネス市場も今後縮小していくことになることが考えられます。これは業界の衰退ということではなく、企業にとっては、より採用コストが下がっていくということであり、人材流動化しやすい時代にフィットした流れだと思います。「安い」というのは人材業界が今まで応えてこなかった価値提供であり、それをテクノロジーが実現していくのではないかと思います。

まとめ

冒頭で書いたように「どうして求職者主体になるのか?」が本書の見るべきポイントだとしました。その点について考えてみると、一つは企業寿命が短くなることに加えて働く期間が伸びることにより、個人個人が自分のキャリアに対し主導権を持って、自身のキャリアデザインをしていくという生き方、働き方に対応する必要があること。もう一つは多種多様な志向・価値観を持つ求職者ニーズに応えることにより企業ニーズにも答える必要があるためと考えられました。このように、これまで企業が個人のキャリアまで考えることが一つのシステムとして機能して来ましたが、これからは個人個人が自身のキャリアを考えるシステムへ移行する事を意味しています。よって求職者主体への変化が必要だと考えられました。

また「負荷」と「価格」の二軸でプレイヤー領域のビジネスモデルを整理した時に、第一領域はアグリゲーション型求人検索エンジン、第二領域はSNS拡散型求人PRサイトやビジネスSNS、第三領域は人材紹介モデルに将来変化していくとありました。この状況下で求人広告はプレゼンスが中途半端になり、居場所を失うことになる可能性があるとありました。

一方で、Openworkの事例研究の中でもありましたが、よりプラットフォーム価値を高め、求職者がさらに集まる場を作り、そこからどのように企業と接続し、マネタイズしていくかがポイントになると考えられ、そのポイントを押さえた上で進化することにより、さらなる発展する可能性があるとも私は考えます。

最後に、人材業界の全体像を捉え、仮説を踏まえた上で、どのように変化していくかの分析をまとめている本書はとても読み応えがあり、今後の方向性を考える上でとても役に立つ内容にまとめられていると思いました。

著者

黒田 真行さん

1965年生まれ。1988年リクルート入社。「B‐ing」「とらばーゆ」「フロム・エー」関西版編集長を経て、2006年から2013年まで「リクナビNEXT」編集長、その後「リクルートエージェント」ネットマーケティング企画部長、「リクルートメディカルキャリア」取締役などを歴任。2014年、ルーセントドアーズ株式会社を設立し、35歳以上のミドル世代を対象とした転職支援サービス「Career Release40」を運営。2019年、転職を前提としない中高年のキャリア相談プラットフォーム「CanWill」開設。また、転職メディアや人材紹介事業などの人材ビジネス各社の経営課題解決を支援する事業強化コンサルティングも展開している

Twitter : https://twitter.com/damadama777

佐藤 雄佑さん

株式会社ミライフ代表取締役。新卒でベルシステム24入社、マーケティングの仕事に従事。リクルートエイブリック(現在のリクルートキャリア)に転職。法人営業、支社長、人事GM、エグゼクティブコンサルタントなどを歴任。MVP、MVG(グループ表彰)などの表彰多数受賞。リクルートホールディングス体制構築時(2012)には人事GMとして、リクルートの分社・統合のプロジェクトを推進。2016年、株式会社ミライフ設立。未来志向型キャリアデザインエージェント事業、戦略人事コンサルティング事業、働き方変革事業などを展開している。早稲田大学ビジネススクール(MBA)卒業、米国CCE,Inc認定GCDF‐JAPANキャリアカウンセラー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

フィードバックがあれば嬉しいです

「こういった方向性も考えられるのではないか」「もう少し詳しく知りたい」など、なんでも構いませんのでコメントを残していただければと思います。

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KoheiKAJIWARA

プロダクトの開発に携わっています。分析の内容をこちらにまとめています。